自然観察や野外活動で感じるのは、自然の恵み。特に「食べられるもの」って楽しいですよね。オランダでも森などを歩くと、食べられる野草やベリー類に出会うこともあります。これらは取って食べてもいいのでしょうか?気になったので調べてみました。
※2021年4月時点の情報です。法律等は変わることもあるのでご注意ください。
※本記事はワイルドピッキング(自然にある動植物を採集すること)を推奨するものではなく、個人や家族で自然体験を楽しむことを目的にまとめました。読んだうえで、どうしたら自然に負荷をかけないか、また自然から恵みをもらうとはどういうことかを考えながら、楽しんでもらえたらと思います。
1.結論からいうと
個人で家庭内で楽しむ程度であれば、基本的には問題ありません。
ただし、気を付けないといけない注意点がいくつかあります。
2.オランダでのワイルドピッキングは違法か?
まず、ワイルドピッキング自体は、厳密に言うと野生動植物の密猟にあたり「違法」です。
しかし実際には、販売・譲渡目的ではなく、良識を持った範囲で、個人が家庭用に採集する分には問題ないとされています。
<罰金・違法となった事例や見解>
・ベリー類やきのこは250gが個人消費の目安。それ以上取ると104ユーロの罰金の可能性という報道。
https://www.ad.nl/gouda/wie-meer-dan-250-gram-aan-bramen-en-bessen-plukt-riskeert-een-prent-van-104-euro~af7c3958/
・ハーレムの自然保護区域を管理する組織では、ワイルドピッキング自体が最大4100ユーロの罰金、または1か月の懲役という見解を出しています。
https://indebuurt.nl/haarlem/eten-drinken/mag-dat-bramen-plukken-in-haarlem-en-omgeving~91863/
・違法に牡蠣を収穫したとして、2000ユーロの罰金となった事例。
https://www.rtlnieuws.nl/editienl/artikel/5171381/wildplukken-oesters-zonder-vergunning-boete-natuur
3.オランダ森林管理委員会の見解と提言
① ローカルルールを守りましょう
自治体、自然保護地域、国や自治体が管理する公園、キャンプ場などのリクリエーション施設などでは、独自のルールが設定されています。エリア全域で植物の採集が禁止されているところもあるので、まずはその場所のルールを確認しましょう。
② 取るものについて、十分な知識を持ちましょう
キノコなど有毒な植物、また食べられる種類と見かけは似ているけど有毒の植物もあります。食中毒を避けるため、自分で判別できて、食べて安全とわかっているものだけを取りましょう。場所によっては農薬や動物の糞尿がかかっている可能性もあるので、どのような場所かもよく知っておきましょう。
また保護のため、法律で採取が禁止されている植物もあります。これらを採取するのは違法です。詳しくはこちらのリスト。
(法律としては自然保護法に種名が記載。このページの末尾にある「付録」部分です。)
③ 周りの環境を大切にしましょう
採取のために、枝を折ったり切ったり、土を掘り返したりしないようにしましょう。遊歩道から外れて森の植物や土を踏みつけることは、植物だけでなくそのエリアに住む動物たちにも影響を与えます。あくまで「森や自然の中に入らせてもらっている」という気持ちで、見えるところ、手が届く範囲で楽しみましょう。
④ 一か所から取りすぎてはいけません
ある一か所からたくさん採取すると、来年植物が育つための種がなくなってしまいます。個人の消費量にとどめるのはもちろんですが、1か所だけで集中的に取りつくしてしまわないようにしましょう。
⑤ 自分一人だけのものではありません
その植物は動物たちの大事な餌でもあります。そして後から来る人も、ワイルドピッキングを楽しみたいかもしれません。採取するのではなく、見たり写真を撮ったり、他の形で自然を楽しみたい方もいるかもしれません。人も動物も、みんなが自然の恵みを得られるように心がけましょう。
4.気を付けないと具体例
3.の項目に注意し、大きなかごを持ち込んで採集するわけでなければ、違法だと摘発されるようなことはほとんどないと思われます。もう少しだけ具体的に見ていきましょう。
<①ローカルルールについて>
(例1)ボス公園
アムステルフェーンとアムステルダムにまたがるボス公園の規則では「植物やきのこを採集してはいけない」とあります。なのでボス公園での採集はNGです。https://www.amsterdamsebos.nl/huisregels/
<②植物の知識について>
採集禁止リストは2017年に改訂されました。たとえば春頃に道端でも多く見かけるニンニクの香りがする葉っぱ、ラムソン(オランダ名:daslook)は、以前はリストに載っていました。しかし2017年以降は外れているため、現在は採集しても問題のない種類です。しかしラムソンと葉の形が似ているドイツスズランやイヌサフランは有毒のため、気を付けないといけません。
5.まとめ&お役立ち情報
と、いうわけで。当たり前のことばかりですが、自然に負荷をかけないことを考えて楽しむというのが大切ですね。そしてトラブルを未然に防ぐためにも、事前にローカルルールや食べられる植物の種類について調べたり、詳しい人・現地のスタッフなどに聞いてみて、安全にワイルドピッキングを楽しみましょう。
*オランダの食べられる植物ガイドブック
オランダ野外生物学協会から、ワイルドピッキング関連の書籍が出ています。
*国内のワイルドピッキングマップ
ワイルドピッキングができるところのマップです。ただし、一般からの投稿もあり、たまに許可されていないエリアも含まれていることがあるのでご注意ください。